■留学準備と学校の決定
留学のきっかけは、自分でデザインしたものを製作できる技術を身につけて将来の仕事に繋げていきたいと思ったことです。また、以前よりイタリアのデザインに興味があったため、イタリア留学について色々と調べていたところ、惹かれたのが革製品で有名なフィレンツェでの鞄製作でした。鞄製作は日本でも学ぶ事ができますが、フィレンツェで暮らしながら同時に技術を身につけることができるという点に魅力を感じ、留学を決めました。
本格的な留学をする3ヶ月前に、情報収集と準備のため1ヶ月間フィレンツェに滞在しました。この間、イタリア語は全く勉強したことがなかったためLeonardo da Vinciで語学を学びながら、鞄製作ができる学校を探しました。そして、Scuola Leonardo da Vinciの語学・文化コースで学ぶことに決めました。
このコースには、6ヶ月間のScuola del Cuoioでの鞄製作の授業と、その間に行われる1ヶ月間(午前中)のScuola Leonardo da Vinci での語学の授業が含まれています。
このコースを選択した一番の理由は、時間を無駄にすることなく集中して学べると感じたことです。授業料は決して安くありませんが、その分、平日毎日6時間と、しっかり授業時間が確保されていました。
その他、「沢山手を動かして実際に鞄をつくること」を重視しているように感じ、技術がよく身に付きそうだと思った点、長い歴史の中で生まれてきた鞄のかたちの基本的なパターンを教えてもらえること、学校の雰囲気の良さ、学校にある革を自由に使用できること、機械が充実していること等も決め手となりました。
■授業について
Scuola del Cuoioの6ヶ月コースは、年が明けて1月より始まりました。
初日から、革を切る道具の使い方を学び始めます。最初の1ヶ月程でカードケースやパスポートケース、ポーチなど、小物の製作方法を学びました。その後はコースの最後まで様々なかたちの鞄製作について学びました。進度は様々で、早く進む学生もいればひとつひとつ丁寧に進める学生もいました。
小物や鞄は、まずモデルとなるかたちがあって、先生がその基本的な制作方法を全員に教えてくれました。それに沿って、各自で、革を選んだり、かたちに変更を加えたりします。かたちや選ぶ革等によって、型紙や作り方、中に入れる芯材が異なってくるため、あとはそれぞれが先生に質問をして教えてもらいました。先生は経験が豊富で、熱心かつ的確に指導してくれました。尚、材料は基本的に学校にあるものを使用できます。自分の気に入った革や金具を買ってきて製作をする学生もいました。
学外授業として、革のなめし工場見学へ行ったり、鞄や革の展示会へ行ったりしました。これらの体験は、鞄製作に関連した鞄業界やデザイン、素材等に関する知見を広げる良い機会となりました。
授業中の説明はイタリア語もしくは英語で行われました。2名の先生の内、1名はイタリアでの経験が長い日本人の先生でしたので、わからないところは日本語で尋ねることもできました。
尚、このコースには2月に1ヶ月間の語学の授業が含まれていました。この期間は、午前中はLeonardo da Vinciで語学を学び、午後はScuola del Cuoioで鞄製作を学びます。イタリア語既習者は語学の授業の初日にクラス分けテストを受けます。
私の場合、語学はまだ勉強を始めて数ヶ月の段階だったのですが、留学後に語学の授業を受けたり自習をしたりすることによって、なんとかついていくことができ、最終的にはコミュニケーションもだいぶ取れるようになったと感じています。語学はできるほうが良いですが、語学ができないために留学を断念する必要はないと感じました。
■一緒に学んだ仲間
6ヶ月コースのクラスメイトは10名程度でしたが、それ以外のコースの学生も入れると、常時16名程度が同じ教室で学んでいました。国籍は、イタリア、韓国、日本、スイス、フランス、中国、ロシアなど様々でした。また、私のような初心者から、独学で学んできた人、鞄業界での仕事経験がある人、服飾業界での仕事経験がある人など、背景も様々でした。
このように国籍も背景も多様なメンバーでしたが、このコースから何かを得ようと意欲的に学ぶ姿勢は共通していました。友達になって、授業時間外にも、一緒に街のお店やショーウィンドーに飾られた鞄を見て歩いたり、様々なイベントに参加したり、旅行へ行ったりもしました。その存在はとても貴重で、日々の生活のことや鞄のこと、将来のことまで、色々と話し合いました。コースが終わっても、一緒に学んだクラスメイトはずっと良い仲間であり、良い同志でいられると感じています。
■コースを終えて
初心者の段階から、このコースをとおして鞄製作の楽しさを知り、今後鞄製作を続けていきたいという将来へ繋がる展望を得ることができたのは、私にとってとても大きな収穫でした。
授業で学んだこと、そして鞄製作をとおして繋がることができた仲間や先生、芸術の都フィレンツェの空気を体感できたこと、全てに満足しています。この留学を支えてくださった学校関係者の方々、一緒に過ごした友人達やお世話になった大家さんに、心より感謝しております。
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